別れるための28日の蜜日
さらりと言った彼の態度は、絶対にただのサラリーマンじゃない。こんな態度1つでも、以前との違いが見えるんだ。

「ビール飲む?」

パソコンを閉じて冷蔵庫を開ける律人の背中に、コツンと額を押し当てる。

「律人、大きくなったんだね」

「ん?身長はもう伸びてないけどなぁ」

「じゃあ私が縮んだのかな」

とぼけて返すから、私も冗談にする。

「出張、木曜日からになった。土曜日の昼過ぎには帰ってくるよ。ごめんな」

思い出した、と背中越しに言うと、くるりと振り向いた律人が抱きしめてくる。軽く弱い力のそれは、包み込むような抱擁。心の中まで温められる。

「謝らないでよ。仕事だから仕方ないんだし」

気にしてほしくなくて言ったのに、律人にはこの返事は不満だったようだ。私の髪に顔を埋めて、拗ねるように呟く。

「その仕方ないって言葉、最近百合の口癖になってない?俺が言わせちゃってるんだけどさ、でも言って欲しくない」
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