別れるための28日の蜜日
2月1日
年度末が近くなると会社はどこかザワザワとしてくる。それが人事部ならなおさら。
社員食堂で人事部所属の同期、斉藤香苗がはぁぁぁっと長いため息をついていた。

「今年はどうも退職希望多くてさー。ただでさえ産休育休が多いのに、もうどう移動させていいのか分かんないってば‥‥」

「お疲れ様だねー。そんなに年度末の退職希望多いの?」

日替わりのチキンカツをつつきながら香苗に聞く。

「数として多いってより偏ってるって感じかなー。一般職の女子社員は最悪、派遣でまかなうとしても、若手男子がねー」

香苗もオムライスに刺したスプーンがなかなか口に入らない。

「それは会社としても問題だよね。うち、わりと福利厚生もしっかりしてるのに、ね」

「最近の若者は定着率悪いのよ。大した理由なくても辞めてくんだもん」

アラサー女子でも総合職だとそろそろ役職が付き出すころだ。会話も自然と会社側からの意見が混ざる。

「でも今の時期なら地域移動は終わってるんでしょ?」
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