別れるための28日の蜜日
「で?百合は自分の事、なんて言ったの?」

「何にも。ほかの同僚と遊びに来てるって事にしたし」

「信じたんだ?」

「多分ね。ホントのお嬢様ってああいう人なんだろうねー。善良で疑うことを知らなくてさ」

「周りに守られて来た世間知らずの箱入りってことでしょ?そんなコ、生活能力低くて使えないわよ」

「‥‥香苗、私の事を大事にしてくれるのは嬉しいけど、それは流石に言い過ぎ」

微苦笑して言ったら、やっと香苗も笑ってくれた。

「ふふっ。ま、思ってもない訳じゃないんだけどね」

それからふいっと姿勢を直して目を覗き込んでくる。

「そのお嬢様に稲垣くんをまかせられるって安心したってこと?」

嘘を見逃さないって真っ直ぐな視線に、私も表情を改めた。

「まかせてもいいかなって思ったのよ」
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