別れるための２８日の蜜日

「それはそうなんだけどねー。来年度の移動はその分大変になるし、今回の本社内移動も多くなっちゃうんだよ」

人事部も大変なんだなーと頷いてから、チキンカツを口に入れると香苗にジロッと睨まれた。

「おたくの稲垣君も辞めちゃったしさー」

「お、おたくのって！私のじゃないし。大体、あれは仕方ないじゃない」

突然辞めた律人のせいで落ち込むんじゃないか、と私の事を凄く心配してくれた香苗には律人の事情をざっと話してある。私も愚痴る相手が欲しかったし。

「まぁそうだけどさー。で、おたくたち、最近はどうよ？」

オムライスを一口頬張った後、空のスプーンを私に向けて振りながら香苗ちゃんが聞く。

「んー、通常営業だよ。年明けはあいさつまわりやらパーティやらで忙しいって会えてないけど」

「年明けってもぅ２月はいったんだよ？丸１ヶ月あってないの！？」

香苗ちゃんのツッコミには答えずにお味噌汁のお椀を手に取る。

「‥‥潮時かなーって、考えてる」