偽りの翼Ⅱ
「そっか、忘れちゃったんだっけ?…………俺は、夏川千尋。花恋の友達、だよ」
なるべく普通に、優しい口調で。
友達を強調して。
花恋に、自分に、言い聞かせるように。
「友達、ですか?」
「ああ……そうだよ」
そう言えば、彼女はひらめいたような顔をした
「………もしかして、透の、…桜風の方ですか?」
「え?」
なんで、ここで桜風が出てくるんだよ?
「あ、違いましたか?すみませんっ」
彼女はおどおどしながらそう言う
「いや、あー…。桜風みたいな感じなんだけど……」
月影の名前は出せなかった
彼女を苦しませてしまうかもしれないから。