偽りの翼Ⅱ




「俺と……?」




花恋の記憶は、由美香に裏切られる前でとまっているんだ。





幸せな記憶のまま。





脳腫瘍を発症したことも忘れているんだ。





幸せなようで残酷。






俺と愛し合った夜さえも忘れてしまっている。






俺は、何もなかったことにはできないのに





「ああ。俺のことはさっぱり覚えていないんだよな。…それに、」





「それに?」





言うべきだよな、やっぱり





「花恋、あと一年の命なんだ。」





「嘘、だろ?」





俺だって、嘘だと思いたい。





けど、ほんとなんだよな。





「マジ、なのか?」





透は大きく目を見開いた






「ああ…」






俺は、コクリとうなずいた






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