Snow Drop~天国への手紙~(上)【実話】
「私は…あの子を死ぬほど苦しめてしまった。

これくらいの事で罪を償えるとは思ってないよ…でも、何でもしてあげたいッ。

…あこちゃんを精一杯支えてあげてね?」

有美はそう言って、大きなお腹を大事そうに支えながら、旦那さんの元へ歩いて行った。

有美さんは、きっと素敵な母親になる…

去って行く有美の背中を見てエリは思っていた。


あこは、宛てもなく走り続けていた。

もう疲れて、足がもつれてくる。
「ハァッ…ハァッ……」

顔が汗なのか、涙なのか…ぐちゃぐちゃでよく分からない。

わかった事。
あっちゃんがガンに犯されている事。

気が付くと、あのミニ公園にたどり着いていた。

真っ白なブランコの奥の大きな木の下には、小さな花壇があった。

春になった今、花壇は茶色の土しかない。

茶色の土に刺さった小さな白いプレート。

あの日と変わらない文字。

《あこの花》
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