Snow Drop~天国への手紙~(上)【実話】
確かに。
確かに、駅前のケーキ屋さんのシュークリームは、本当に美味しい。

毎日、限定30個で、直ぐに売り切れてしまう、幻のシュークリーム。

『何個でもおごっちゃう~、ありがと、お姉ちゃんっ♪』

1個、280円もするけれど、あっちゃんと一緒に居られるなら、そんなの安い物だ。

ピッ

どうしよう…
あっちゃんが迷惑そうな顔してたら…

付き合った初日からこんなんじゃあ、軽い子だって思ったかな?

電話を切って、おそるおそる、あっちゃんを見つめた。

あっちゃんが、真剣な顔で口を開いた。

「…俺ん家…来る?」

『え!…うん…』

あこを乗せた車は、あこの家の前をスーッっと通り過ぎてしまった。

もう、後戻りは出来ない。
する気もない。

車内は、EXILEの曲がずっとリピートされて流れていた。

あこもあっちゃんも、口を開こうとしない。

ブゥン…

15分位走った車が、静かに停まった。

真っ暗闇の空間の中、あっちゃんをじっと見つめる。

「到着!ここ、俺ん家!」

着いちゃった。
勢いで来ちゃったはいいけど…

今になって緊張して来ちゃった…どうしよう、やっぱり…

不安気に、眉間にシワを寄せてうつ向くあこを見て、あっちゃんが笑った。

「プッ…クククク…ばぁ~か!しょっぱなから手ぇ出したりしねぇよ!

何期待しちゃってんの?」

そして、あこの髪の毛をくしゃくしゃっと撫でてくれた。

ホッ

あこのこわばっていた顔付きが、一気に緩んだ。

『はぁい!』

「よし、降りろ!」

車から降りて、あっちゃんが真っ暗な玄関のドアを開けた。

時刻は、真夜中の0時。

辺りはシーンと静まり返っている。

あこは、小声で挨拶をした。

『お邪魔しまぁーす…』
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