不思議の街の不思議な話


血相を変えたブランがこの応接間に飛び込んできたのは、それからさらに15分くらい経ってからのこと。それまでの間、私に一瞥もくれずに、優雅に紅茶を飲んでしたザッカリーは、ブランが入って来ると急ぎもせずにカップをソーサーに置き、また少し高い声でブランを迎えた。

「わざわざ悪いね、ブラン君。」
「いやオレの方こそ...」

言って、その視線をザッカリーから私に移したブランは私の方に大股で歩み寄り、ガッと両肩を掴んでは私の目線に合わせて腰を折った。

その深い緑色の目は、心配で揺らいでいる、

「怪我は!!?」
「だ、大丈夫...」
「本当に!?」
「う、うん」

ブランのあまりの剣幕に気圧されて小さくしか返せなかった私だが、ブランは「良かった..」と独り言のように漏らすと手を放した。
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