不思議の街の不思議な話
近くで見ていたザッカリーが、割って入る。
「鍵を閉め忘れてたようで...、昨晩たまたま兄様の所有する部屋に用事があったから、オレが助けたんだ。」
「そうか...ありがとう。恩に着るよ。」
まあよくもそんな嘘をぬけぬけと!私が眉を釣り上げて見せれば、ザッカリーは気付かぬふりをしている。
「何者かに襲われたようだったな。オレが駆けつけるとすぐに逃げていったよ。」
「....」
ブランは苦々しそうに拳を握りしめていた。責任を感じているのだろうか。
「ともあれ、ブラン君。彼女が無事で良かったじゃないか。それが何よりのはずだ。」
「...そうだな。」
ブランは完全には納得していないようだが、なんとか気持ちを飲み込んだようで、いつもの優しい笑顔を私に向ければ、手を差し出した。
「ごめんね、遅くなって。帰ろうか。」