不思議の街の不思議な話
ブラン邸もなかなかすごかったが、シーランド家の家はそれとは比べ物にならないほど広く、応接間から門のところまでかなりの距離があった。
ようやく玄関を通り過ぎ、よく手入れされた生垣と薔薇の庭を横切れば、大きなアーチ型の門の傍に小さな人物の姿が見えた。
よく見ると見覚えがある。
「アビイ、遅くなってゴメン。」
「謝るくらいなら、初めからさっさと歩くようにすべきですわ。」
この辛辣な物言いの少女は、忘れようにも忘れられない強烈な印象を私に残した。
ブラン邸の玄関で仁王立ちしていたアビゲイルである。