不思議の街の不思議な話


「いいね。それ。ビジネスには新しい切り口がいつも必要だ。」

そんな大人じみたセリフを放った人物の年齢はどう見ても10代前半。背は私より頭一つ低く、細い体にフィットした白いワイシャツと、サスペンサーで繋がった半ズボンのポッケに横柄に手を突っ込んで、颯爽と現れたその少年は、私を値踏みするように上から下まで眺めた。


「家賃回収なんてちまちました仕事は、亜人にやらせておけば十分で、君はもっとこう…別のことに使えそうだよね。」
「レイリー。」
「おっと、随分顔が怖いね、副隊長さん。でもビジネスの話は対等にやらせてもらわないと。」
「一般人に危険な仕事をさせるのは法律違反だ。」
「何も奥地に派遣するだなんて言ってないよ?ただちょっと、斬新でクリエイティブな仕事を任すかもしれない。」

フフフと笑うその口元は何かを企んでいるかのようだ。ブランは何かすごく不機嫌そうだが、全身から滲み出る物腰の柔らかさはいつも通りだ。

「保護者はオレだ。オレが契約で承諾したこと以外させるのは許さない。」
「何をそんな必死に?副隊長さんは仕事でどうせ普段はいないなら、そっちのが本当の保護者じゃないのかな?」

ブランの禍々しいオーラもさらりとかわすように、レイリーと呼ばれた少年も一歩も引かない。視線がアルトに移ると、アルトが弁解した。

「俺ァただのベビーシッターだ。初めに見つけたのはブランの奴だから、保護権はそっちが保有してる。」
「なるほど。」

キュッと孤を小さく結んだ唇は、何かを高速で計算した結果いいアイデアを思いついたかのようでもある。レイリーは持っていた鞄から何やら髪をゴソゴソと取り出した。小さな読めない文字でびっちりと何か書いてあり、下の方には署名欄らしきものが見て取れる。

インクと羽ペンを持ち出したところを見ると、これが何かの契約書であることは間違いなさそうだ。
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