不思議の街の不思議な話
その空気を圧縮するような視線を送りつけている本人は、不機嫌そうにこちらを見るアビゲイルだ。
「アビイ...」
「いいんですのよ、旦那様。ワタクシは強い女でありますの。」
「ごめんね。」
「怒っておりませんのよ、全く。それよりも、ワタクシはお二方にい早くここを出て行っていただきたい。」
ブランはまた苦笑いだ。私もつられて笑ってしまう。
「昨日はありがとうね。」
ブランのお礼にフンとアビゲイルは答えたが、その顔は満更でもなさそうだ。
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「早くここを出ないとアビゲイルがまた怒るから。」そう言って、恐妻に家を叩き出されたような面持ちのブランはヘラヘラ笑って、私に準備を促した。
一時的な宿として選んだブランの家に、特に時間がかかるものもなく、出発は滞りなく進む。
結局のところ、ブランの家族関係だとか垣間見れると期待したが、結果は惨敗で、よく分からない少女と同居(?)していることだけが判明した。
他に人気は感じなかったが、家の灯りはすべてついていたように思う。
今日も当然目的地は図書館だったが、その行きの道で、気になった質問をぶつけてみる。
「ねえ、アビゲイルって...」
その名前が私の口から出た途端、ブランはビクッとして肩が動いた。
「...何?」
「何者なの?」
「えっと...家族?」
家族?って疑問系かよ。
その後もブランの視線はどことなく泳いでいて、どこを捉えるでもなく、私と視線を合わせることも拒んでいた。
これは一体....