不思議の街の不思議な話
待てど暮らせどブランが来ないので、手持ち無沙汰だった私は、朝食に添えられていたメモを折って遊ぶうちに、メモの裏側にも文字が書かれていることに気がついた。
PS: オレは先に仕事に行く。 ブラン
「……。」
しばしの沈黙の後、「わかるかーッ!」と大声でシンとしたダイニングの壁に向かって叫べば、意外に響いて驚いた。
メモの裏側に書いても気がつかないだろーよ。
変なとこ抜けてんだよなぁ、あのシルクハット。
一通り怒りを吐き出せば、可笑しくて一人苦笑いで顔が綻ぶ。私を置いて出かけたということは、今日から一人で大丈夫ということだろうか。やたら自立を促すのが早い。
これといって手荷物もない私は、軽いカバン一つ持って、ブランの家を後にする。