不思議の街の不思議な話
扉を開くとそこはワンダーランドだった。まさにそういう形容がふさわしい。
部屋に入った瞬間めが痛くなるような、カラフルな空間に迎えられた私は、思わず気を失いそうになった。
何の話をしているかといえば、昨日契約した私の部屋の話だ。結局、ブランもアルトもいないわけだから、消去法であの天使でペテン師のレイリーのところに行く形になる。
同じドアの続くエリアで、契約した部屋はどれだったろう、と迷子になりかけていた時、「ルカさんっ」というちょっとぶりっ子した声に振り返れば、そこにはレイリーが満面の笑みを浮かべて立っていて、手を引かれるまま案内された部屋の扉を今まさに開いたところだ。
一晩かけて行われた内装は、レイリーの趣味なのか、おもちゃ箱でもひっくり返したような騒がしいい部屋だ。
商談中はやたらと大人びているレイリーだが、やはり中身は年相応か、どうかしたら幼いのか、ファンタジー要素が色濃いように思えた。
思わず絶句している私を、不安そうにレイリーが見上げる。
「気に入らない?」
「えっ と、とんでもない」
レイリーの上目遣いに思わず本音ではない言葉が出る。声がかなり裏返っていたが、レイリーは気にとめる様子はなく、私ににっこり微笑んだ。