不思議の街の不思議な話
しばし、街の見学と私は無駄に歩き回ってみた。狭い路地はどれも入り組み、うねっていて、奥に入るほどに日差しの影が増えて薄暗く、そこら中に苔やら蔦やらあって灰色のレンガの道を所々緑が彩る。たまにお日様が当たる場所には小さな花が咲いているのも見られた。
小さな露店が立ち並ぶ裏通りは、少し寂れたような印象も受けたが、その前の道で子供が笑顔で駆けていく様子を見れば、この街の営みがどんなものかが伝わってきた。
目を輝かしてあちらこちらを見る私を、アルトは喉をクツクツ鳴らしながら、何も言わずについてきた。よほど可笑しいのだろうか。
「ごめん、寄り道ばっかりで。」
「いーぜ?別に。俺ァ楽しんでるし。」
と、アルトは言うが、アルトのことだからきっと計画性もなく言っているのだろう。あまり真に受けると、あっという間に日が暮れそうだ。この辺で軌道修正しようと、買い物リストのメモをアルトに見せて、それらを手に入れられる場所を尋ねてみた。