不思議の街の不思議な話


「ブランもそうだけど、アルトだって、私のお世話なんかしてもいいことないじゃない?ブランはそれも仕事だって言ってたけど、アルトはどうなの?ブランに何かを言われてるの?」
「別に何も言われてねーよ。あいつとはただの旧知の仲なだけだ。」

アルトは何故かムスッとしているようで、それ以上は話す気がないように感じた。私は納得いかなかったが、とりあえず話題を変えてみる。


「謝肉祭なのよね、もうすぐ。謝肉祭ってどんなの?」
「…。」

アルトは何も答えない。こちらから表情を伺い知ることはできない。アルトの歩みに合わせてユッサユッサ左右に揺れる、長い銀髪を眺めながら私は答えを待った。


「…色々、あった日だな。」
「え?」
「それで色々起こるであろう日だ。今度のはどーなるかわかんねーけど…」


ボソリと独り言のように漏らしたアルトの言葉を拾うのは難しかったが、耳を澄ませばなんとか聞こえた。


「ビッグイベント…なのね?」
「…。」

もはや私と話していることすらアルトは忘れてしまっているのか、すっかり物思いにふけっているようである。
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