甘々なボスに、とろけそうです。


――お兄ちゃんと、そんなやり取りをしている最中。


「……君のお兄さん、目の付け所が違うねぇ」


「良い子でしょ、彼女」


「ものは相談なんだけど。僕に譲ってもらえない?」


「またまたぁ。そんなことを企てたら、雷が落ちますよ」


「まだ死にたくないや。だけどあの男が女の子にうつつを抜かすなんて、嵐でもくるんじゃない?」


「正直なところ、こんな日が来るとは思いませんでした。今回の兄さんの強引さには驚きですが、妹としては幸せを願いたい限りですね」


「驚きとか言って、里香子ちゃん……全面的に協力してるよねぇ」


「えへへ、バレました?」


「見ればわかるよ。あの子の着てる服も鞄も、里香子ちゃんのセンスじゃん」


「さすが新條さん、お気づきでしたか。兄さんの為に、一肌脱ぎました。私、ミコちゃんは兄を気に入ると踏んでます」


「気に入るどころか、もう……」


「えっ?」


「なんでもない。今夜は楽しんできてね」


フロアの傍らで、そんな会話がされていることなど、知る由もなかった――。

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