甘々なボスに、とろけそうです。
事態を呑み込めないでいると、更にテーブルに料理が運ばれてきた。
「……ごめんな、みこ」
「みんなして、私を騙したの?」
すると、私をなだめるように、すかさず里香子さんがこう言った。
「ミコちゃん、兄さんが直接会いたいって言ったら会ってくれた?」
「それは……」
どうだろう。正直なところ、ためらっていたかもしれない。顔も知らない人――ましてや社長レベルのお偉いさんからの誘いを『喜んで!』なんて二つ返事で引き受ける社交性は、私には皆無だから。
「ほんというと裕樹はね、兄さんの頼みを何度も断っていたの」
「え……」
兄に、視線をうつす。
「みこのことだ。俺の上司相手に気を使うってのは、目に見えてたからな」
「お兄ちゃん……」
「そんな俺も、社長の強引さに負けて、みこを呼び出すことに手を貸した。それは……里香子からの頼みでもあったし」
「私から裕樹に、お願いしたの。会わせてあげて欲しいなって」
ボス、そんなに私に会いたがってくれたの……?
「でも、これだけは言っとく。俺は社長のこと、人としても上司としても尊敬してる。別に社長や里香子から言われて仕方なしにっていうんじゃなくて、2人が良い関係を築けるならそれでいいと思う」
「うん……」
「でも、みこが社長とどう付き合いたいかは全くの別問題だから。里香子や俺のことを考えて、無理に合わせなくていいから」
「そうよ。でも、私はミコちゃんなら大歓迎だけどなぁ」
「里香子、あまりプレッシャー与えないで」
「うふふ、ごめんねぇ」