甘々なボスに、とろけそうです。
少しして、里香子さんが席を立ち上がった。兄も立ち上がり、里香子さんを支えている。飲み過ぎて、まっすぐ立てないのだろう。
「社長、すみません。お先に失礼します」
「里香子のこと頼むぞ、裕樹」
「こちらこそ、みこのこと、お願いします」
先に帰る気満々の兄。安堵の表情を浮かべてこっちを見ている。なんなの、その顔。
ボスから携帯を受け取ると、『ご馳走さまでした』と一礼し、里香子さんとお店から出て行った。
「……ふぅ。上手くいったわねぇ。どう、迫真の演技だったでしょ」
「みこ相手だから通用したんだ。社長には、茶番ってバレてるよ」
「ミコちゃん恋する乙女って感じだったよねぇ」
「時間の問題だよな……。俺ら完全に邪魔者状態」
「拗ねるな拗ねるな! 可愛い妹をとられて寂しいのね。帰って飲み直しましょ?」
――とまぁ、そんな話をされているなんてことには、私は知りもせずに。不安を抱えていたのも僅かな間で。
このあとボスと2人で、とびきり甘い甘い時間を過ごすことになる。