甘々なボスに、とろけそうです。
それから社員証の〝特典〟のことを説明し忘れていたと、補足するのように説明を聞いた。飲食フロアの奥にヒッソリあるカフェに入るために必要で、アッパーフロアの社員ならばVIP待遇を受けられるという話を聞いた。
ただ、そこには真のセレブしかいないため『あなたに入る勇気があればの話ですが』なんて薄笑いされてしまったけれども。
試すようなことを言ってきたり毒舌だったり、爽やかな見た目に反してサディスティックな人だけれど、なんだか憎めない。
それは、室井さんがボスのことを絶対的に信用していて、ボスもまた室井さんを頼っているのが手にとってわかるからだろう。
結局のところ、室井さんは最初から私を不審に思ってはいなかったようだ。すぐに弱音を吐いたりしっぽを巻いて逃げ出すような人なら要らなかったのだそうだ。
「楽しいだけじゃ、メリハリがないでしょう?」なんて楽しげに言う姿には少しゾクリとした。
「ここでの経験が少しでも未衣子さんの今後の生活に良い影響を与えることを祈ってますよ」なんて別れ際に言ってくれた。