甘々なボスに、とろけそうです。
「そりゃ、マズいねぇ。まぁ、訴えられたところで僕が負けるなんてことは――100%ないけど」
(……はい?)
いや、こんなの、どう考えてもあなたが悪者でしょ!?
「いいから、はやく……どい、て……」
「……ほんとにビックリしてるんだ」
男の口元が顔の横にきたと思ったら、髪をそっと耳にかけられ、
「ここからの景色よりずっと良い眺め……見せてあげようか」
――そんなことを、囁かれ、
「……っ!!?」
軽く、耳を、噛まれた。
「な、なっ……!?」
エレベーターが止まり、扉が開く直前に男が私から離れる。
扉が開くと、逃げるように私はエレベーターから出た。
「あはは。面白い顔。大人になったら遊んであげてもいいよ、迷子の子猫ちゃん」
「……っ、」
なにか言い返す前に、余裕一杯に笑った男を乗せたエレベーターの扉が閉まり、静かに上っていってしまった。