甘々なボスに、とろけそうです。
顔をまじまじと、覗き込んでくる。
「人違い、です……」
「あー、思い出した。数時間前も乗り合わせたよね。いつの間にそんなにめかし込んだの?」
バレた……。
「目的は、果たせたの? これから?」
「え……?」
「言ってたじゃん。目的を果たしたら、すぐに帰るって」
「それは……なんというか、成り行きで、帰れなくなったといいますか……帰る必要がなくなったというか……」
って、どうしてこの人に、こんな話をしなきゃならないの。
「もしかして、ここで働くの? 君が?」
うーわ。凄くバカにした顔で見てくる。
私は男の手を振り払い、28階のボタンを押した。
「どこかの社長たらし込んで、秘書にでもしてもらった?」
「……っ、変な妄想しないで下さい」
「侮れないねぇ、君」
そんな想像しかできないなんて、どうかしてるんじゃないですか。
「なんなんですか、人のこと、からかって……」
「どこの誰? 君にそんなに夢中になってるやつって」