甘々なボスに、とろけそうです。


言われてみれば、たしかにウィルくんは、学生のようなスタイルだった。穴あきジーンズだし、飴を舐めていたし、大きなヘッドホンだって場違いというか。

ただ、美少年がゆえ、なんでもモデルのように着こなせてしまうキャラではある。

身につけるそれらが撮影衣装や小物のように、はやがわりする。……ずるい。


「とっても自由な環境だから、リラックスしてね」


たしかに、堅苦しい雰囲気はない。フレンドリーなサナエさんのおかげで、少し緊張がほぐれる。

そういえば兄はスーツを着ていたが、営業とか外回りのお仕事をしているのだろうか。

戻ってすぐまた出ていっちゃった。封筒のこと、全然気にもとめないで。


「困ったことがあったら、なんでも相談して」


「ありがとうございます!……ボスは、奥にいますか?」


あの真っ黒な部屋に。


「社長なら、室井さんと出ていったわよ。あ、室井さんは、社長の右腕ね」


室井さんって、ボスの部屋にいた人だよね。爽やかそうな第一印象とは裏腹に、黒いオーラのある……。

敵視されてしまった。ハッキリと、気にくわないと言われてしまったわけだが。


「怖そうな人……ですよね」


「社長?」


「いえ、あの、室井さんです」


「鋭いわね、ミーコちゃん。新人は、最初は社長のことを恐れて優しそうな室井さんを頼るの。蓋を開けてみると、室井さんも容赦ないのに。笑顔で銃口向けてくるタイプ」


サナエさん……そのたとえ、わからないでもないですが、怖いです。


「でも、心配しないで。用心深いだけで、悪い人じゃないわ」


そうだといいのですが。

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