甘々なボスに、とろけそうです。


この時の私は、なにがウィルくんをそこまで苛だ立たせてしまったのかも、わからないでいた。

ふと、デスクを見ると、写真立てに飾られた1枚の写真に目がいく。写っているのは、幼い頃のウィルくん……?

それから、隣にいるのは、お母さんだろうか。お母さんは、今もアメリカに住んでいるのかな。私まだ、ウィルくんのこと、なんにも知らないや。


「明日、仲直り……したいな」


「やってくれましたね」


(!)


気づけば、室井さんが部屋の中にいた。正確にいえば、私のすぐ背後にいた。やはりあなたは忍者ですか。いつの間に入ってきたのですか。


「えっと……や、やってくれたっていうのは……」


「ウィルのことですよ。なにを怒らせてるんですか」


「す、すみません!」


説明せずとも、室井さんの千里眼により、ことの状況が全て把握されているようだ。


「すみませんで済む問題ですか」


「……と、いいますと?」


「ウィルがやる気をなくせば、うちの会社は大損です」


「え……お、大損ですか?」


「ざっと計算しても億単位の損失でしょうね。邪魔するようなら、即刻出て行ってもらいますよ」


「わ、私は、邪魔するつもりなんて……ないです」


むしろ、お手伝いできることがあるならしたい所存なのですが。


「どうせ、ウィルに迫られでもしたのでしょう」


室井さん……あなたは、なにもかもお見通しなんですね。ウィルくんの性格も、よくおわかりのようで。


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