私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜

「由伸。今日の動画は?」

「巨大スライム実験」

源之助の言葉に由伸は淡々と答えた。

「で、その子は?」

光二と呼ばれた男の人があずさを見て、源之助に尋ねる。

「あの……」

「日下部あずさちゃん。下のFURADAで働いているんだよ」

「なるほどね、例の子をとうとう落としたか。俺は蔵並 由伸(くらなみ よしのぶ)。Youtubeで動画投稿して飯食ってまーす。けっこう売れてるんだよ。事務所も入ってるし」

由伸が悪戯っぽい表情でニヤリと笑って、あずさに挨拶した。

確かに、街の広告で見たことあるかもしれない。

右耳についた3つのピアスがきらりと光る。

「樽田 光二(たるた こうじ)。弁護士だ」

眼鏡をかけた男の人が淡々と自己紹介をすると「二人とも大学時代からの友人なんだ」源之助は嬉しそうに言った。

「よろしくお願いします」

「あ、そうそう。あずさちゃん今日からこの家に住むことになったから」

「「はあ!?」」

驚く二人の反応を見て、あずさは源之助の周囲にもまともな人がいたのだとホっとする。

普通に考えて、突然見知らぬ女の人を連れて来て喜ぶ同居人はいるはずもない。

「いや、あずさちゃん昨日家が火事になっちゃって、一部屋空き部屋があったじゃん?そこ使っていいよって俺が言ったの」

「火事?」

「大丈夫なのか?」

ああ、まともな反応が得られてうれしい。

「ビデオに撮ったらアクセス数いくら稼げただろう……」

「この案件、我が社に任せてくれないか。刑事事件の裁判は得意中の得意なんだ。いや、むしろ大好物と言ってもいい」

「……」

やっぱりまともではなかった。

二人ともすごくとても、いやかなりイケメンなんだけどね。

源之助も整った顔をしているが負けていない。

こんなにキラキラした集団の中で自分はやっていけるのだろうかと少し不安になるあずさだった。

「じゃあ、あずさちゃんの部屋紹介するね」

柔らかい笑顔を浮かべて、源之助があずさに手を差し出す。

「いや、あの……手はつながなくて大丈夫です」

やんわり断ると「……ひどい。あずさちゃん」とグスグス泣き始める始末。

「……」

「……俺、一生懸命にあずさちゃんに手を差し出したのに」

「……」

「なのに、あずさちゃんは俺と手を繋ぎたくな「早く部屋紹介していただけます?」」

「はい」

アッサリ持ち直してスタスタと歩き始める源之助。

本当にどこからどこまでが本気なのか分からない。


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