私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜


「本当に仲がいいよね」

店長の中村が源之助が帰った後、ニコニコと笑顔を浮かべながら言う。

「仲良く見えます?」

「見えるねー」

「……」

無視しているだけなのに、仲良く見えるのはなぜなのだろう。

「そういえば、あずさちゃん。住む家はどうしたの?会社の方が、家が決まったら書類を提出してほしいってさっきメールが来てたけど」

「え……」

シェアハウス(正しくは家賃を払っていないので、居候)していることは、会社では秘密ということにしてもらっている。

店長と言えども、このビルの52Fに住んでいることを知られたくはなかった。

「えっと……まだ探している最中で……」

なんとか、誤魔化す。

「そっか……。確かに昨日の今日で急に住むところなんか見つからないよね。会社の方には、僕から報告しておくよ」

「ありがとうございます……」

あずさは何とか誤魔化して安堵した。

家が見つかったら、出ていくのだ。

あと数日中に家を探さないと。

スマホで何件かめぼしい物件は見つけている。

あとは時間を作って見学し、不動産で契約するだけだ。



仕事が終わって、17時になると上がり作業を始める。

FURADAは夜の22時まで営業なのだけれど、せりのシフトは朝早くから夕方までが多い。

店長の中村が休暇の日は、昼から夜まで入ることもあるが「女の子は早く帰りなさい」という中村の好意に甘えているのが現状である。

「……帰るか」

夕食を一緒に食べると約束した手前、勝手に帰ることもできない。

源之助のことを待つが、なかなか姿を現さないので先に帰宅することにした。

どうせ、家一緒だしいいよね。

うん。

連絡先は知らないが、まあ大丈夫だろう。

一人で自己完結してあずさは、裏口の漆黒のエレベーターに向かう。

IDカードはもう既に、源之助から貰っていた。

カードをかざし、エレベーターに乗る。

52Fのボタンを押すと、静かにエレベーターが上がっていった。

余計な階に止まることがないので、すごく楽だ。

ポーン。

と音がして、静かに扉が開いた。

玄関のドアを開けて中に入る。

シーンと静まり返った部屋の中。

今日はみんなお出かけらしい。

夕飯一緒に食べたいと言っていたな……。

作ったりしたら迷惑なんだろうか。

毎晩あんなVIPラウンジで食事するのもなんだか気が引けてしまう。
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