私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜

まあいっかと気を取り直して、勝手にキッチンを使い始める。

使った形跡の少ないそのキッチンには小麦粉と卵。

そして少しだけ残った野菜と豆腐といった何とも言えない量だ。

「……」

作れるもの少ししかない。


やはり男性だけで暮らしているとなかなか料理をする機会がないのだろうか。


ましてやここはB.C. square TOKYO。


上位層で働いている人達だし、忙しくて時間も取れないのかもしれない。


冷凍庫を開けると松坂牛と書かれた箱がそのまま冷凍されている。

「……」

なんと勿体無い。

すき焼きにするしかないのではないか。

きっと皆さんもすき焼きが好きに違いない。

お米がないから後で買いに行こう。

松坂牛のすき焼きが食べたい。

勝手に自分の中で自己完結して、鼻歌を歌いながら材料を切り、肉を自然解凍する。


「はばたいたら〜ふん、ふん〜」

作っていたら楽しくなってきて鼻歌を歌う。


「あの……」

「青い、青い、あの空〜」

「すみません」

「愛想をつきた……って、え!?誰?」

突然知らない人が驚いたような顔であずさを見ていた。

「いやいや、あなたこそどちら様でしょう?」

冷ややかな表情で言い放つその男。

非常に美しい彫刻のようなその顔はどこかで見たような顔だった。

「私は……」

「不法侵入って言葉知ってますか?」

有無を言わさないかのようにその男はあずさに詰め寄る。

シューシューとお湯が噴きこぼれる音がした。

火を止めなくちゃいけないと頭の中で警告音がなる。

いや、目の前の男から逃げなくてはならない。

逃げようにも追い詰められている。

「不法侵入って犯罪なんですよ。犯罪者は警察を呼ばなくちゃいけないですね」

彼がスマートフォンの画面をタップしようとした瞬間「アズニャーン」と源之助の声がした。

「ただいま〜アズニャーン。どうせ、僕の言うことなんか聞かず先に帰宅して、僕に愛の家庭料理を作ってくれちゃったりしてるんだろ〜」

「源之助……」

「光之助兄さん」

「え、お兄さん?」

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