私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
「で、いつまでダイニングで自慢話を聞けばいいわけ?」
亨がうんざりといった表情で源之助に言う。
あずさが作ったすき焼きが今まで食べた食事の中で、一番美味しかったというバカップルのありふれた惚気話をもう四回も聞かされている。
さすがに部屋に帰ってゆっくりしたい。
「いつまでってそんな大した時間話していないだろう?」
惚気ている側は、そんなに時間が経っているなどと感じていないらしい。
あっけらかんとした表情で、彼は友人に言葉を投げかけた。
「お前、そんなに嬉しかったんなら、直接本人に伝えてこいよ」
「いや、あずさからは今日は早く寝たいからゆっくりさせて欲しいとのことだ。大切な恋人の時間を奪うのは彼氏として失格だろう?」
大事な友人の時間を奪うのはアリなのかよ。
という愚痴は、きっと今の源之助には通用しないだろう。
げんなりとして、仕事用のPCを開いた。
こうなったら仕事を片付けながら、話を聞いてやる。
「亨」
PCを開いた亨に源之助がニコリと笑って、彼の肩に手を置いた。
「なんだよ……」
「人の話を聞くときに、片手間に聞くのは失礼だと親から習わなかったかい?」
「……」
何を言っても無駄だ。
うんざりした表情で亨は深いため息をついた。
「ところでさ、享」
「なんだよ……」
「今日兄貴が来た」
「……え」
神妙な表情で言う源之助に、享の表情も一変する。
「なんで、今更?」
「わからないけど。あずにゃんのことを見て、色々と言ってたから用心しないといけないなと思ってさ」
本題はこっちだったのか。
本題にいくまで長すぎるだろと思ったことは、話の腰を折ってしまうのでやめておくことにする。
「にしても、あの男が出てくるとロクなことがないからな。源之助、気を付けろ」
「そうだよな」
「この話は、光二と吉伸には伝えたのか?」
「いや、まだだ。あいつら残業やイベントで今日は帰らないって言ってたしな。一生懸命働いている人間に、余計な心配はかけたくない」
「そうやって抱え込むところ、お前のよくないところだと思うぞ」
友人の危機を感じながら、享はもう一度深い溜息をついた。
何やら一波乱ありそうな雰囲気だ。