私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜


夢を見た。


家が燃えている。


もがいても、もがいても手足が動かない。


形がどんどん崩れていく。


ああ、大事なものを取りに行かなくちゃ。


大事なものって何なんだろう。


ワカラナイ。


ワタシガホシイモノハナニ?


混乱にまみれ、手足が震える。


それでも、自分の手足は自由が利かない。


あっという間に家は消え去ってしまった。


そこに光之助が出てくる。


「不法侵入って言葉知ってますか?」


違うの。


不法侵入じゃない。


「不法侵入って犯罪なんですよ。犯罪者は警察を呼ばなくちゃいけないですね」


違うってば。


ああ、声もでない。


助けて。


誰か。



まるで金縛りにあったように体が動かないの。


ねえ、誰か。



「あずにゃん!」


声をかけられ、目が覚める。


目の前には心配そうな表情を浮かべた源之助が、あずさの顔を覗き込んでいた。



「……」


「大丈夫?あずにゃん。随分うなされていたみたいだけど」


「大丈夫」


「おいで、抱きしめてあげるよ。怖かったね、よしよし」


不覚にも優しく抱きしめられて、心地が良かった。


「すいません……」


「謝ることは、ないさ。僕らは恋人同士じゃないか」


「……いや、いつから?」


突拍子もない言葉を吐かれて、冷静になった。


居候させてもらっているし、不意打ちでキスはされてしまったが、付き合った記憶はない。



「え?」


何を言っているんだと言わんばかりの表情を浮かべる源之助。


「ってか、源之助さん。何で裸なんですか?」


「ああ、寝る時何も着ない派なんだよね」


大事な箇所も隠さず、堂々と言う。


そういう問題なのだろうか。


「いや!変態!早く出てって!」


「そんな!あずにゃん!」


全裸ですがってくる成人男性(33歳)。


「あずにゃんって呼ぶな、変態!」


何故、こんな男に抱きしめられてホっとしてしまった自分がいたのだろうか。


悪夢にうなされたことも忘れて、あずさは後悔するのだった。







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