私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
「おはようございます」
「わあ、日下部さん。ひどいクマだね。昨夜は眠れなかったの?」
店長の中村が気の毒そうな表情を浮かべながら言った。
「はい……変質者に遭遇しまして」
大きな欠伸をしながら、あずさはホイップクリームを補充する。
今日から、マンゴークリームフラペチーノの新発売だ。
ホイップクリームをたくさん補充しておかないと、あっという間に足りなくなってしまう。
「火事にあったり、変質者に遭遇したり。日下部さんの人生って本当波瀾万丈だよね」
「……店長。顔が面白がってませんか?」
「いや、そんなことないよ。あ、ほらGEN様」
店長の指さす方に嫌々顔を向けると、GEN様いや源之助とその愉快な仲間たちがFURADAのテーブル席で優雅にコーヒーを飲んでいた。
「甘いな。なんでこれクリームが入っているんだ?」
「光二。それはきっとショップのお姉さんがおまけに入れてくれたんじゃないか?あずにゃんの姿が見えないな」
「ってか、源之助はよくそんな甘いの飲めるよね。俺はブラックがいい」
「享は甘い物本当駄目だもんな。にしても、おいしいな。今日の動画はFURADAのコーヒーにしよう」
自由気ままにのびのびと会話をしている四人組。
なんで、今日は人数が増えているのか。
彼らの姿を見つけた瞬間、女性のお客様がソワソワとした表情でFURADAに入ってくる。
「あのぉ~。お隣座ってもいいですかぁ~?」
彼ら目当ての女性たちが、コーヒーを片手に彼らの近くに陣を取り始める。
まるで、冷戦だ。
ニコニコとした仮面の下には、般若のような表情が隠れている。
我が先に、このいい男達と関係を持つのだと。
女性も25歳を過ぎると、立派なハンターだ。
「日下部さんは、行かないの?」
そんな女性たちの行動を眺めながら、中村があずさに言った。
「いやいや、勘弁してくださいよ。何でですか?」
「だって、日下部さんGEN様と付き合ってるんでしょ?」
「何をおっしゃってるんですか?そんな訳ないじゃないですか!」
「え、違うの?」
「違いますよ」
「だって、この間GEN様がいつも僕の彼女がお世話になっておりますってうちの会社に挨拶に来たよ。今度正式に婚約する予定だって」
「はあ?」
いつの間にそんな話になっているんだ。
誰も了承した覚えはないというのに。
「でも安心したよ」
「え、店長。ちが……」
「幸せになるんだよ」
なんで、こう私の周りには人の話を聞かないやからが多いのだろうか。
早く帰ってゆっくり眠りにつきたい。
心底思うあずさだった。