私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
ピークも過ぎて、今日も平穏な一日が終わろうとしている。
マンゴーティーの売れ行きは好調で、追加発注をかけなくてはならない。
「店長、いくつ発注かけますか?」
「じゃあ、100で」
「わかりました」
「あと、日下部さん。表にある看板だけど、イラストの部分が少し剥げちゃってるから、一旦裏に下げてくれる?これから遅番で芸大の坂下さんが入ってくれるはずだから、直してもらおう」
「看板ですね。分かりました」
素直に返事をして発注の仕事を終えた後、あずさは表にある看板のところへ行く。
誰の悪戯だろうか。
マンゴーのイラスト部分が爪でひっかかれたような跡がある。
一生懸命に時間をかけて書いた人がいるというのが分からないのだろうか。
「全く……」
こんなに細かいグラフィックの絵を手書きで書くという才能はそうそう生まれるものではない。
FURADAが有名になったのも、この手書きの看板があったからだというのに。
「よいしょっと」
掛け声とともに、看板を持ち上げる。
ずっしりと重い看板。
イラストが描かれた黒いボードには触れないように細心の注意を払って、運ぶ。
「あずにゃん」
「誰が、あずにゃ……」
声をかけられた方に顔を向けると、そこには吉伸が立っていた。
今朝も来たばかりだというのに、どうしたのだろうか。
「あずにゃん。今、ちょっとお願いできる?」
「は、はあ」
それより、私のあだ名は「あずにゃん」で決定なのだろうか。
アニメのキャラクターみたいで、なんだか嫌なんだけど。
由伸がメニューを真剣な表情で見ている。
「あのさ。オススメって何?」
「オススメですか?そうですね。今の時期だとマンゴークリームフラペチーノが新作なので、オススメしてますし。マンゴーティーなんかは、品薄になっているので当店ではレアですかね?」
「ふーん。今はマンゴーなんだ」
「はい。おすすめですが」
「やっぱり動画だと最新のやつだよなあ」
ブツブツと言いながら、吉伸が「でも、こっちも捨てがたいな」と人気商品と矢印を指された商品と比較検討している。
「動画に出すんですか?」
「まあ、おいしいし。紙ナプキンもおしゃれだったから、女性ユーザーにウケそうだなと思って」
吉伸と言えば、YOUTUBEで動画をあげている有名人だ。
登録者数が150万人を突破しているチャンネルで、FURADAのコーヒーを扱ってもらえれば一躍売上がアップするに違いない。