私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
唐突に光之助の名前が出て身体が反応してしまう。
昨日の夢を思い出す。
「知ってるんですか……?」
「うーん。まあ、今朝、源之助から聞いたからね。俺のあずにゃんみんなで守ろうとか言っちゃってさ。なのに、彼女なんかじゃないって言われてかわいそう」
「……」
「切ないね。でも、まあ恋愛って相手の気持ちも向き合わないと意味ないし、あずにゃんの自由だよ」
「はい」
「説教じゃないからね。でも光之助さんには気を付けて。あの人が動いた時ってあんまりいい結末にはならないことが多いから」
「というと……?」
「うーん。昔もらしいんだけど、源之助と光之助さんってよくある腹違いの兄弟なんだけど、後継者争いの時に割と色々源之助の周囲の人が傷つけられたらしいんだよね。まあ、それがきっかけで先代が源之助を後継者に決めちゃったらしいんだけさ。このビルの所有権から何からやっぱり手に入れたいって思ってるだろうし。今あずにゃんの気持ちはどうあれ、源之助の一番のウィークポイントはあなただからさ」
「……そうなんですね」
やはりあの禍々しいオーラは勘違いではなかった。
昨日源之助が帰って来なかったら、いったいどんな風になっていたのだろうか。
「まあ、考えすぎも身体によくないよ。あずにゃん」
「ってか、思ってたんですけど、なんであずにゃんって呼ばれてるんですか?」
「え、なんかしっくりくるんだけど」
「……えー」
「なんだよ。お嬢さん。言いたいことがあるならはっきりと言いなさいな」
肘でウリウリと肩をつかれる。
テレビのニュースが変わり、東京の某研究所から大量の薬品が盗まれたという事件が耳に入ってきた。
どうやら、使用の仕方によっては爆発物にもなってしまうらしい。
事件性があるとみて、警察が動いているようだ。
「最近、こういう物騒な事件多いですよね」
「本当。この某研究所って、割とここから近いよね。あずにゃん気を付けなよ」
吉伸が真面目な表情であずさに言葉をかけていると、扉がガチャッと開いた。
「マイスイートハニー!ただいまー!今日はカレーかい?」
ヒョウ柄のジャケットに赤いズボン。
シルバーのサングラスをかけている。
そんな激しいファッションに身を包んだ男に背後から抱きしめられて、あずさは脱力する。
「……」
「まあ、頑張れ」
ニッコリ笑って、吉伸はしれっとカレーの続きを作り始めた。