私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
光二が部屋を出ていったあと、沈黙が流れる。
飛びついてくるのかと思ったが、意外に源之助は紳士でいることが多い。
裸で部屋に飛び込んでくることもあれば、手を繋ぐことをしないこともある。
いやいや、期待をしているとかそういうのではない。
あり得ない。
「……」
「あずにゃん」
「へっ?」
唐突に名前を呼ばれて変な声を出してしまう。
「今夜、ヒマ?」
「えっと、午後から不動産を見に行こうかと思っているので」
「なんで?あずにゃんはここにいればいいよ」
「そんなにお世話になれないですよ。申し訳ないです」
「そんなに俺のことが嫌い?」
悲しそうな表情で、源之助が静かに言った。
「嫌いとかそういう訳じゃないですけど……」
このまま自分の気持ちも曖昧なまま、彼にお世話になる訳にはいかない。
源之助と付き合うということは、今のあずさにとって少し重い。
普通の社会人だったあずさにとって、この日本社会を背負う源之助とは住む世界が異なるのだ。
ここに居続けてしまった際、この生活に慣れてしまったら。
もし源之助に明日ここを出て行ってほしいと言われたら。
そんな相手次第の人生なんて嫌に決まっている。
貯金だってある。
自立出来ている。
ここの上層階で働いている人達には敵わないかもしれないけれど。
「僕は、君が好きだ」
「……」
「だから一緒にいたいし、僕のことを知ってほしい。そして、君が困っているなら、僕は君の力になりたいし、一緒に困難を乗り越えていきたいんだ」
「……でも」
「ただ、君が僕のことが嫌いで仕方がなくて一刻も早く出ていきたいと思っているなら、止めはしないけど。もしあずにゃんに、少しでも僕を嫌いではないって気持ちがあるのなら、もう少し一緒に暮らしてから決めてほしいと思っているよ」
「なんで……なんで、そんなに簡単に私の事が好きだって言えるの?」
どうしてそんなに簡単に自分のことを好きだと言えるのだろう。
「簡単じゃないよ。あずにゃん」
「……」
「あずにゃんが思っているほど、僕は君のことを真剣に考えてる」