私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
後頭部に鈍い痛みが走る。
眉を顰めながら、瞼を開くと、そこは見慣れない部屋だった。
高級そうな部屋だ。
源之助の家とはまた違ったつくりではあるが、お金持ちの家であることには間違いない。
「……」
誰か!
と声をあげようとするが、どうやらガムテープで口を塞がれているようだった。
これは、犯罪なのでは?
と思うが、現実問題身体も椅子に括り付けられており、身動きも取れない。
警察に通報ということも出来ないので、どうしたらいいのかあずさには分からなかった。
しばらく経った後、一人の女性が部屋に入ってくる。
長い髪の毛は綺麗にパーマがあてられており、高そうなスーツを着ている。
耳にはシャネルのピアスが上品につけられていた。
白くて細い指先にある爪にもしっかりと丁寧なネイルが施されていて、彼女が身なりを整えるだけの財力を持っていることと、非常に大切に育てられてきたのだということが分かる。
人が来たことで、あずさは少しばかりホっとして彼女の方を見た。
「あら、目が覚めたのね」
フフフと笑いながら、彼女はあずさの方を見下ろした。
「手荒な真似をしてしまいまして、申し訳ございませんね。でも、こうでもしないと私とあなたがお話しする機会がないと思いましたの」
ニッコリと笑って言うが、あずさの口に貼られているガムテープが外されることはなさそうなので、お話しするというよりも一方的に何かを聞かされるのだとあずさは思った。
「率直に言いますと、私別所 麗華(べっしょ れいか)は、松平源之助さんの婚約者ですの」
「……」
婚約者という言葉を聞いて、あずさの身体がピクリと小さく反応した。
やっぱり、いた。
住む世界が違うということは、こういうことだ。
不動産に行こうと思っていた自分の選択肢は間違っていなかった。
「言いたいこと分かります?」
麗華に静かに問われ、あずさはゆっくりと頷いた。
「ふふ、お話しの分かる方でよかったわ」
ニッコリと笑って、あずさの口に貼り付いたガムテープがゆっくりと彼女の美しい手によって剝がされる。
久々に口で息が出来る。
新鮮な空気を口の中に入れることが出来るので、むせ返るようにあずさは思い切り息をした。