私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
「なんで、あずにゃんがいないの!?」
家中を探しても彼女の姿がない。
いつの間に出て行ってしまったのだろうか。
源之助が慌てている様子を見て、享が時計を見ながら「でも、もうそろそろパーティーはじまるぜ」と言う。
「あずにゃんがいないのに、そんな所に行っている場合じゃない」
「だけど、お前の次期総帥を祝うパーティーだろ。すっぽかしたらヤバいことくらい分かってるだろ」
厳しい口調で享は源之助をたしなめた。
「……」
「お前がこけたら俺らだって、ここからお役御免だ。お前が何でお付きの人を付けずにいられるかしっかりと考えろよ。あずささんだって大人だ。ちゃんと家に戻ってくるさ。お前は過保護なんだよ」
「光之助が何かやってくるかもしれない……」
「もし何かをやってきたとしても、パーティーをすっぽかしたらそれの方が、相手の思うつぼだろ。お前がいかに苦労して今のポジションを手に入れたかをしっかりと思い出せ」
「……」
享の厳しい言葉に、源之助は小さくうなずいた。
こんな時、自分の大切な人を優先できない。
そんなポジションに自分はつこうとしている。
ただ、自分を支えてくれた人たちのことを考えると、ひとつひとつの行為を適当には出来ない。
「まあ、俺もちょっと探してきてあげるよ。今日は一番フットワーク軽く出来るのは俺だしね」
吉伸がニッコリと笑って源之助の肩をポンと叩いた。
「すまない……」
「このビルの51階でやるんだろ。状況が落ち着いたらあずにゃん連れて行くよ」
友人の言葉に、小さくうなずいた。
その時、彼のスマートフォンが電話の着信があったことを告げる。
「……麗華さん?」
麗華と浮かんだ文字に、源之助は首を傾げた。
「はい?」
「あ、源之助様?」
甘ったるい声色で麗華が源之助の名前を呼ぶ。
「どうされました?」
「いえ……今日はおめでとうございますって言いたくて……」
「ありがとうございます。これもひとえに別所財閥のお力添えがあったからですよ」
いつもの営業スマイルで、源之助は笑って言った。
あずさのことが絡まなければ、彼は非常にスマートで冷静だ。
「ふふふ。今日はお会いできることを楽しみにしておりますわ」
「ええ。僕もですよ」
短い簡単な会話をして電話を切る。
一体何の用だったのだろうか。
「吉伸……」
「どうした?」
「頼む」
「おう」
短い会話のやり取りをして、彼は自分の家を後にした。