私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
「日下部さん。今朝のニュース見た?」
店長の中村が興奮気味に声をかけてくる。
「見ましたよ。爆発事件ですよね」
「あれ、源様の所有するビルらしいよ」
知っている情報をそんな堂々と説明されてもと思いつつ「え、そうなんですね」と曖昧な返事をしておく。
今日作ったお弁当はしっかり届いているのだろうか。
「日下部さんの家の火事といい、なかなか平穏な生活が訪れないね」
「本当ですね……」
「次は、このビルだったりして」
「縁起でもないこと言うのやめてくだいよ」
中村の笑えない冗談に、あずさは顔を引きつらせて笑った。
「ごめん、ごめん。キャラメルソース補充分なくなったから、レジお願いね」
「わかりました」
一人レジに残される。
ピークの時間も終わっているので、昼間前の時間は少し暇だ。
少しだけ斜めに曲がったメニュー表を指先で直していると「注文いいかしら?」と声をかけられる。
「承知しまし……圭さん?」
「先日ぶりね。ブラックコーヒー2つ頼めるかしら?」
「その節はお世話になりました。780円です」
「安いのね」
驚いたように圭は言った。
「上の階とは違いますからね。あ、ご馳走します。先日のドレスとかもクリーニング中でしてまだ返せてないですし……」
「……いいのよ。あげるわ。あのドレス」
「いえいえ!いただけません!」
「コーヒー代の御礼よ」
「よかったら、スコーンとかも」
商品の菓子を何個かつめるが「今ダイエット中だから糖質系は遠慮しとくわ」と笑ってコーヒーを受け取った圭は去って行く。
どうやったらあんなに綺麗で優雅な女性になれるのだろう。
羨ましい。
心底思うあずさだった。