私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜



家を失った次の日、見事なほどの澄み渡った青空を眺めながら、あずさは職場に向かった。


55階建ての大きなビル。


たくさんの大手企業や進出企業のオフィスが入っている、その名も「B.C. square TOKYO」。


あずさはそのビルの2階で「FURADA」という名のコーヒーショップの店員として働いている。


シアトルから日本初上陸をして、まだ日が浅いものの客の入りは上場だ。


いや、コーヒーは働く人のお供だからか毎日飛ぶように売れている。


深夜も駆け込み寺のように残業組が濃厚なドリップコーヒーを購入していく姿を見て、働いて高いお金を稼ぐというのは大変なことなんだなと改めて痛感した。


「日下部さん!ニュース見ました!」


職場に入り、エプロン姿に着替えていると店長である中村雄二(なかむら ゆうじ)が心配そうな表情を浮かべながらあすざに駆け寄ってくる。


「中村さん」


「放火なんでしょ?大丈夫なの!?」


「いや、あんまり大丈夫ではないですよね……」


昨日、警察に散々付き合わされた。


結局出火の原因というのが、あずさのベッドの上でまさかそんなところで火遊びなんかするわけもなく。


出火した時間には、あずさはコンビニで買い忘れた箱ティッシュを買っている最中だったので放火であるということが予測された。


コンビニの監視カメラにもしっかり写っていたのだからアリバイはばっちりだ。


ばっちりと威張れることでもないけれど。


「だよね。住むところは?」


「いや、昨日はネットカフェで我慢しました」


「……女の子が危ないよ」


こんな自分にも女の子だと心配してくれる中村は優しいなとあずさが人の温かみを感じていると、注文の呼び出しのベルが鳴る。


ああ、戦場に出て行かないと。


忙しい時間のスタートだ。


朝の7時~9時まではとにかく人が並ぶ。


オフィスに「FURADA」のコーヒーを持って行く社員が多いからだ。


参入した目的はそうなのだけれど、社員2名とバイト3名ですら人手が足りない。


昨日補充した生クリームがもう2/3になっている。


「キャラメルクリームモカ2つお願いします!」


アルバイトの女の子の言葉で、あずさは返事をしてコーヒーを作る作業に戻った。


あっという間の2時間が経ち、客足が遠のくと今度は女の子たちの黄色い声が聞こえる。


「キャー!GENよ!」


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