私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
「源!写ったぞ!」
映像がもとに戻り、管理室のメインコンピューターに画像が写る。
「うわ……ひでえ火事」
吉伸が口を手で覆って言った。
逃げ遅れた人々がうごめている。
「享、換気扇とスプリンクラー作動を操作できるか?」
「やってみる」
「消防は何をやってるんだよ……」
「ビルが高すぎて上に上がれないんだろ。火災が発生した場所が高いから梯子も届かないだろうし。地道に享に頑張ってもらうしかない」
光二が吉伸の呟きに答えた。
「あのさ。享」
源之助が静かに言う。
「どした?」
「あずにゃん、俺捜しに行くから黒のエレベーターだけ動かせるように出来る?」
「……」
「……」
「火災がエレベーターのところまで来てたら、お前エレベーターごと落ちる可能性あるけど、それでも?」
「帰りは階段で帰ってくるよ」
「……」
「……」
誰も止めはしなかった。
救助を待とうなどという奴はいなかった。
彼が彼女のために色々とやってきたことを知っているし、彼が彼女のことを好きなことを知っている。
「じゃあ、これを着ていきなさい」
田中さんが、防熱素材で出来たジャケットを棚の中から出してくれた。
あずさの分もだった。
「万が一の時のため、我々も訓練していますから。そして、帰りはこちらで連絡してください」
とトランシーバーを渡される。
「こちらの管理室で安全なルートをお教えします」
「田中さん……」
「あずささんには、色々差し入れをずっとしてもらっていましたからね。妻がFURADAのコーヒーのファンになったのは、間違いなく彼女の影響ですから」
そんな人を亡くしちゃいけない。
すぐに彼女のところへ。
そう力強く言われて頷く。
また爆発音がした。
「源急げ!ミドルフロアでなんか起きた!映像がやられた」
キーボードを打ち込みながら、ビルの全体図を映し出す。
「まだエレベーターは大丈夫だ」
その言葉を信じて彼は急いで彼女がいると思われる場所まで急いだ。