私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
「で、何でもう一度ビルに戻ってるんですか?」
「え?」
「だから何でビルに向かってるんですか?」
源之助に手を引かれて連れて行かれているのは、B.C. square TOKYO。
「え、だって俺の家この52Fだもん」
だから、あんな毎朝きっかり同じ時間にこれたのか。
自宅がビル圏内だとは皆目検討もつかなかった。
「そ、そうなんですね」
ビルに戻って、彼は管理室の裏側に回る。
そこにあったのは、寂れた裏口には似つかわしくない漆黒で出来た少しだけ豪華なエレベーター。
源之助がそこにIDカードをかざすと、扉は静かに開いた。
1Fと52Fしかボタンのないエレベーター。
静かにエレベーターが上がっていく。
余計な階に止まらないので、1分もかからずにそのエレベーターは目的の階に到着した。
扉が開くと、六畳ほどのスペースがあってその奥にまた扉があった。
財閥の住む家となるとセキュリティーは万全らしい。
またカードをかざして、源之助が扉を開けると、そこには……。
「あ、源之助おかえり」
「……!?」
男の人が半裸で立っていた。
「亨(きょう)由伸(よしのぶ)と光二(こうじ)は?」
由伸?光二?
「ああ、リビングじゃない?その子は?」
「今日から一緒に住むんだ。あずさちゃん」
亨と呼ばれた男は「どーも」と軽くあずさに挨拶をして扉の中に消えてしまった。
「……」
「……」
「……」
「あ、あと同居人が何人かいるけど、鍵は付いてるからセキュリティーは安全だから」
どうしてこんな大事なことを後出しで言ってくるのだろうか。
部屋に入ってしまった手前、今更やめておくとも言い出し難くあずさは「わかりました」とだけ言葉を発した。
それに、また外に出て変質者に遭遇するのも嫌だった。
家が見つかるまでは、好意に甘えよう。
リビングと呼ばれる部屋に入ると、そこには二人の男性が黄緑色の大量の何かを大きなタライに入れているところだった。
「あ!源!手伝え!そこの女の子も!」
「おう!任せろ!」
「え?」
未確認生命体のような黄緑色のドロドロの正体がスライムだと気がついたのは、近くに寄ってからだった。
でろんとタライの中に入ったスライムを見て、金髪に右側を刈り上げている男の人が「みなさんー!完成でーす!」と声を張り上げた。
大丈夫?この人。
と思った瞬間、ビデオカメラがあることに気がついた。
「では、See you next movie!」
金髪の男の人はポーズを撮った後、真顔で歩いてビデオを止めに行った。