私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
何とか炎をかいくぐり、やっとの思いで屋上に到着すると八之助が待っていた。
「早く乗るんだ!走れ!」
「じいさん!何ここに来てんだよ!危ないだろ!」
源之助が慌てたように言う。
「バカ者!孫がピンチの時に下でなんか待ってられるか!」
八之助が激怒して手招きする。
「早く乘れ!」
手を差し出されて、あずさが最初に乗る。
その瞬間、激しい衝撃がビルを襲い源之助がよろめいた。
「総帥!ビルは危険です!早く退去しないと」
「黙れ!わしの孫がまだ乗っておらんのじゃ!お前が降りろ!」
無茶苦茶な要求をヘリの操縦者に言い、八之助は再び源之助に手を差し出した。
源之助は再び立ち上がり、八之助の手に捕まる。
「お……おもい…」
老体に成人男性を一人で引き上げるのは厳しいようだ。
「手伝います!」
あずさも彼の手を引いた。
「あずにゃん。ありがとう」
ヘリコプターに乗り、扉を閉める。
「早く出せ!」
八之助の怒鳴り声と共に、ヘリコプターはビルから離れていく。
しばらく離れた瞬間、今まで聞いたこともないような音がして52階のあの部屋が爆発したのが見えた。
「……」
「……」
「……」
誰も話をしなかった。
ただ、その散っていく炎の塊をみていた。
一瞬、綺麗とすら思ってしまった。
自分たちがあと10分そこにいたら。
そう思うことすら拒否したくなるほど、激しいものだった。
「タイマーはダミーだったのか、もしくは他の階の炎が燃え移ったのかもね」
「……」
「……」
源之助の呟くような言葉に誰も反応することは出来なかった。
次に口を開いたのは、八之助で「さすがわしの孫。強運じゃ。あの中を生き延びてくるとはのお」とやっと口が動かせた様子だった。