私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜


仕事が終わって店を出ると、そこには源之助が立っていた。


「仕事終わったあずにゃん?」


「終わったよ」


「お疲れ様」


「うん。ありがとう。そっちもお疲れ様」


「ありがとう」


自然に手を繋ぐ。


「どうだった?お兄さん」


光之助のことだ。


精神的におかしくなってしまっているらしく、法で裁くというよりもまずは精神病院で心のリハビリが必要なようだ。


何度も「あの老いぼれが死ねばよかった」と言ったり「助けて!頑張るから!もっと頑張るから」と急に子供のような状態になったりするらしい。


幼い頃、過度なプレッシャーを当てられて育ったせいで心の成長を後回しにしてしまったことが最大の原因だそうだ。


ゆっくり回復して、ゆっくり裁かれ、ゆっくり更生していけばいい。


人生短いけれど、先は長い。


「全然気が付かなかったよ。兄がそんな状態だったなんて」


「……」


「そんな家族がいるけど、俺と結婚本当に大丈夫?」


心配そうな表情を浮かべて源之助が言う。


「今更、何言ってんの?」


眉を顰めて、あずさは源之助の顔を見た。


そんな理由で簡単に結婚を破棄するような女に見えるのだろうか。



「……」


彼にしては珍しく不安そうな表情を浮かべているので、あずさは小さく息を吐き言葉を紡ぐ。


「大丈夫。一緒に乗り越えて行こう」


「ありがとう。あずにゃん」


少しだけホッとしたように源之助は言った。


「こちらこそだよ」


優しく微笑み、手を強く握る。


安心したように握り返された。


彼の大きな手が、彼女の手を優しく包み込む。


「俺、今日オムライスが食べたい」


急に思いついたように源之助が言った。


「えー。また?昨日も食べたじゃん」


「でもオムライスが食べたいわ」


「やだ。今日はパスタの気分」


「えー。オムライスーあずにゃーん」


「じゃあ、料理するの手伝ってくれたらいいよ」


「いいよ。帰りスーパー寄ってこうか」


張り切る源之助にあずさが笑う。


「財閥の総帥がスーパーって」


「その財閥の総帥の奥様だって行くじゃんか」



顔を見合わせ笑う。


今日は夕日が綺麗だ。


この男と一緒に歩いていく。


あずさは温かい風を感じながら、隣にいる男の肩に頭を寄せた。




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