男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
期待と不安を感じつつ、支度を終えた私は廊下に出た。
ジャコブが私の頭から爪先までを点検して、襟のリボンの傾きを直してくれる。
それから私を案内して歩き出した。
回廊になっている長い廊下を半周し、西側の廊下を歩いていた。
三階の西側は、大公殿下の寝室などのプライベートルームが集中しているため、立ち入らないようにと初日に説明されていたエリアだった。
胸を高鳴らせて、ジャコブの後ろに続く。
西の廊下の中程まで進み、ひとつのドア前で足を止めた。
「こちらが大公殿下がお食事を召し上がるお部屋となっております。私はここで失礼します」
「うん、ありがとう」
ジャコブが立ち去り、私はドア前で深呼吸する。
殿下は私を許してくれたのか、それとも……。
緊張しながらノックすると、すぐに中からドアが開けられ、見知らぬ中年の執事が「どうぞお入り下さい」と私を入れてくれた。
中はそれほど広くない空間で、私の部屋の二倍もない大きさだった。
藍色と茶色の二色でまとめられた絨毯やカーテン、調度類は装飾が控え目で落ち着いた印象だ。