男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
青の騎士団の団長と肩を並べるほどの剣士とは……その言葉だけで、まだ見ぬ大公殿下に尊敬の念が湧いてくる。
それほどまでに立派なお方なら、いつか私もお目にかかりたい。
いいなぁ、ステファンは。
私たち双子は、朝食のダイニングテーブルを挟んで立っていた。
私は胸元で指を組み合わせて、うっとりと大公殿下を想う。
きっとガッシリとした雄々しい容姿をしているのだろう。
歳はおいくつだろう?
全貴族の尊敬を集めるお方だし、若者ではない気がする。三十代後半か四十代といったところだろうか。
いかにも王様といった風貌で、豊かな口髭を蓄えた凛々しくて、少々厳つい紳士が、悪人たちを相手に剣を振るう姿を想像していた。
一方ステファンは今にも泣きそうな顔をして、「打たれるんじゃなくて、斬られるかも……」と、華奢な自分の体を抱きしめ震えている。
真逆の反応を示す私たち双子の様子を見比べる父は、呆れた顔をしてテーブルクロスの上に深い溜息を落とした。
「ステファンとステファニーの性別が逆だったら、どんなによかったことか」
その言葉で妄想世界から戻った私は、組んでいた指を外して目を瞬かせた。
ステファンに視線を振ると、彼も同時に私を見て、私たちは声を重ねて呟いた。
「そっか。取り替えればいいんだ……」