男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
怪訝そうな顔をする父に、私たちは駆け寄り、左右から抱きついた。
「お父様ったら、天才! そうよ、逆にすればいいいのよ」と私が言えば、
兄も「なんで今まで気づかなかったんだろう。僕の代わりにステファニーがお城に行けばいいんだ」と嬉しそうに賛成する。
母は驚いてレースのハンカチを落とし、父は慌てて私たちを叱る。
「ステファニーを身代わりにするというのか!?
なにをバカなことを言っておる。顔が同じでも、女だとバレたら我が家はおしまいだぞ」
父から体を離した私は、三歩離れて腰に差している愛剣の柄に手をかけた。
両親も兄も使用人たちも、みんなが注目する中で、ニッコリ笑って反論する。
「女だって、バレなきゃいいじゃない」
そう言ったがいなや剣を引き抜き、自分の長い髪を掴むとバッサリと切り落とした。
腰まであった豊かな金色の髪が、薄汚れた絨毯に舞い落ちて、そこを華やかにする。
剣を鞘に収めると、着ている男物のブラウスの棒タイをシュルリと解き、肩までに短くなった髪をひとつに結わえた。
頭が軽くなってスッキリ。
胸の膨らみは、後で布帯を巻いて潰してみよう。
声は低めに出すよう気をつけて、身長はステファンのほうが少しだけ高いから、厚底ブーツを履けばいいかな……。