男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
長い廊下を歩き、螺旋階段を下りて執務室の前まで来たけれど、なかなかドアをノックすることができない。
少しでも軽いお沙汰をいただけるようにと、説明の仕方を考えていた。
全てを私ひとりの責任にできないだろうか……。
私は牢に入れられてもいい。国外追放になっても構わない。
その代わりに、フォーレル家の存続だけは、なんとか許してもらえないだろうか……。
ノックするための右手を上げたり下げたりして、勇気を出せずにいたら、中からドアが開けられた。
ビクリと肩を揺らす私の前に立つのは、クロードさん。
彼はいつも微笑みを浮かべているような人なのに、今は違っていた。
どう対応すべきかと迷っているような困り顔で、きっと私が女であることを、殿下から聞いたのだろうと判断する。
それでも「お入り下さい」と、私を招く声だけは、以前と変わらずに優しかった。
大公殿下は執務机に向かって椅子に腰掛けている。
私が一歩入って立ち止まり、頭を下げると、まずは「遅い」と叱られた。
「早くこっちに来い。
クロードは人払いをしてろ」