男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
爵位剥奪、領地没収と言われる予感に、青ざめて震えていた。
するとフッと笑ったような声が聞こえ、驚いて顔を上げた。
椅子の軋む音が聞こえ、立ち上がった殿下は、私の斜め前まで歩いて、そこにしゃがむ。
軽く握った右拳は、私の顎の下に。
その拳で私の顔を殿下の方に向かせると、柔らかな声で言葉をかけた。
「大胆不敵なお転婆娘だな」
予想外の反応に戸惑い、「あ、あの」と私は言葉に詰まる。
お怒りではないの? どうして……。
青い瞳が眩しそうに私を見つめ、形のよい口元は綻んでいた。
「ステファニー、お前はこの城になにをしに来た?」
「え? で、ですから、兄の代わりに……」
「それだけか? 他にお前の望みはないのか?」
私の望みは……青の騎士になること。
幼い頃に本を読んで知ってから、ずっと青の騎士団に憧れていた。
もっとも教育を受けに来た身で入団できるとは思っていないが、実際に騎士を目にして興奮したし、ジェフロアさんに稽古をつけてもらえることは幸せだった。
そんな青の騎士団への想いを説明すると、大公殿下は綺麗な顔を崩すように声を上げて笑い、大きな手の平で私の頭をワシワシと撫でた。
なぜか機嫌のよさそうな殿下に、私は戸惑うばかり。