男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
殿下が許してくれても、私が女であることを公にできない理由が幾つかある。
ひとつは、私とフォーレル家にお咎めなしで済ませば、他の貴族に示しがつかず、大公家の威厳に関わるからだ。
もうひとつは、女の私は教育を受ける資格がないのだから、本物のステファンをここへ呼ぶ必要が生じるということ。呼んでも来ないのは目に見えているから、それも困る。
最後のひとつは、私を青の騎士にしてくれたことが関係している。
入団規定に性別は書かれていないそうだが、女騎士の前例がないため、快く思わない者が出るかもしれない。
他の騎士たちと上手くやっていくには、男のフリを続ける方が、都合がいいというわけだ。
それで私の今の生活は、これまで通りの教育を受けながら、騎士業をこなすという多忙なもの。
しかし騎士業と言っても、他の騎士たちのように街への見回りや、盗賊狩りに出るわけではない。
時間があるときに、殿下の護衛を務め、側にいるだけといった感じだ。
青の騎士にしてもらえたのは嬉しいけれど、平和な屋敷内で護衛をしても、なにも起こらないというのに……。
身に纏っている青の衣を見ても、なにか物足りないと心が訴えていた。
不満に思うのは、恵まれすぎているからだろうか……。