男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
波打つ腰までの艶やかな茶色の髪が、オレンジ色のドレスによく合っている。
ひとつひとつの動作に品の良さが表れて、殿下を見る目は潤み、頬はピンクに色付いていた。
こんなに美しいお嬢様を、殿下は振り続けているのか……。
他の貴族がエリーヌ嬢を嫁にと言われたなら、断る者はまずいないだろう。
完璧なお嬢様に難癖付けられる点はなく、かつモンテクレールの次に力のあるバルドン公爵家の娘なのだから、手放しで喜んで迎えるに違いない。
殿下はエリーヌ嬢のどこが気に入らないというのか?
前に女はくだらない長話をするから嫌だという話を聞いたが、エリーヌ嬢ほどのお嬢様が相手でも、不愉快に思うのだろうか?
そんな疑問を感じながら、私は与えられた役目をこなすために配置に着く。
玉座に近い壁際に立ち、もしなにか不測の事態があれば、殿下を守るために飛び出して、不届き者を捕らえる。
自らの判断での抜刀も許されているが、謁見の間でも不測の事態は、過去に一度も起きたことがないそうだ。
クロードさんはドア前に待機して、殿下は玉座に腰を下ろす。
バルドン公爵は娘と並んで御前へ進み、さっきまでの待たされて不機嫌そうだった表情を消して、今は恭しい態度で作り笑顔を浮かべていた。