男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「大公殿下、今朝も顔色が宜しいようで、なによりですな。朝食はなにを召し上がられましたかな?」
「叔父上、早く用件を。俺は忙しい」
「そうですな、まずは用件ですな。
では早速、これを」
バルドン公爵は懐から、白い封筒を取り出した。
赤い蝋で封がしてあり、端に金装飾も施された見事な封筒だ。なにかの招待状のように見える。
「エリーヌに届けさせても宜しいですな?」
「いいだろう」
エリーヌ嬢はその封筒を手に、足元のラインを越えて殿下に近づく。
殿下の許可があるので、私が飛び出して行く必要はないのだが、その一挙手一投足に注目してしまう。
貴族然りとした気品溢れる美しいエリーヌ嬢が封筒を差し出し、殿下が受け取る。
美しい者同士、その姿は一枚の絵のようで、ふたりはお似合いに見えた。
思わず見惚れた後は、心の中がモヤモヤと、なぜか不愉快な気分に襲われて……。
バルドン公爵は意地悪で好きじゃないけど、エリーヌ嬢は父親に全く似ていない。
私が不愉快に思う必要はないのに、どうしてこんな気分になるのだろう……。
自分の気持ちが分からずに、首を傾げる思いでいた。